福島県内で太陽光発電を目的とした林地開発が相次ぎ、2012年度以降の116件中42件で違反が発覚。
杜撰な管理による土砂流出などのトラブルが続発し、県は工事中止命令を含む対応を行っています。
森林開発をめぐる太陽光発電施設の建設トラブルが福島県内で絶えない。県は2012年度以降、太陽光発電を目的にした116件の林地開発を許可したが、このうち42件で違反行為が見つかり、工事の中止命令などを出した。朝日新聞が県に情報公開請求し、開示された関係文書からは、事業者によるずさんな実態が浮かぶ。
県が事業者との「打ち合わせ記録簿」で「会社の本気度が見えない(現状を軽視している)」と記していたのは、周りの集落などへの土砂の流出が相次いだ西郷村の施設だ。県は19年に約22ヘクタールの開発を許可した。
今回の開示で、県は施設がある市町村と施設名を公表していないが、西郷村の施設は村議会で取り上げられているとして、名称が公開された。
土砂流出を受けて県は20年に、計画通りに太陽光パネルの設置の前に防災工事を終わらせるよう事業者に指示した。だが、事業者は守らずにパネル設置を進め、再び土砂が流出。県には「(パネルは)下方へ流出すると危険で、施工した方が危険でないと考えた」「(予定工期を)超えると違約金が発生する」などと弁明書を出していた。業者側とのやり取りでは「示した応急工事とは異なる。誰が誰に指示しているのか?」といらだちを示していた。その後も豪雨時などに土砂流出が続き、「打ち合わせ記録簿」には、県側が「本気で対策する考えはあるのか」と問いただす場面まであった。施設はいまも稼働していない。
今年8月の台風7号で、県北の施設の開発現場からは大量の土砂が国道に流れ出ていた。「現地確認結果」の書類には、県北農林事務所の担当者が事業者に当日と翌々日に計4回、電話するも連絡が取れない状況が記されていた。関係者との「処理経過記録簿」によると、県への事前連絡もなく、事業自体が別会社に継承されていた。
県中の施設は13~14年に1・2ヘクタールの森林が無許可で開発されていた。県の指示を受けた事業者は開発面積が林地開発許可が必要ない1ヘクタール以下になるよう、太陽光パネルの周囲に高さ1メートルの木を850本移植する「復旧措置計画書」を提出。事業者側は「森林の開発に許可が必要であることを知らなかった」と述べていた。
14年に開発が許可された会津の施設では「工期短縮のため防災施設の先行工事を行わなかった」などの理由で県が中止を指示した。17年に許可された県中の施設では、擁壁の傾きなどが見つかり、工期が延びた。記録簿で、県中農林事務所の担当者が「違反行為から3年が経過している。復旧方法を真剣に検討すること」「資金不足が復旧できないことの理由にはならない」と事業者に早期の対応を求めていた。
19年に許可された県中の施設では、木の伐採中に下敷きとなって作業員1人が亡くなるなど労災事故が相次ぎながらも、県に届け出ていなかった。事業者側は「(施工業者が)外国人労働者のビザ切れ等の理由から隠蔽(いんぺい)したかったのでは無いか」と県に説明していた。
県によると、この2年度で工事の中止を指示した案件のうち7件は計画が止まったままだという。
〈林地開発許可〉開発行為で森林の機能が失われ、災害などが起きるのを防ぐため、国は1974年から森林法に基づき、森林を開発する際に許可制を導入した。要件を満たす場合、知事は許可しなければならない。1ヘクタールを超える開発が対象で、全国的なトラブルを受けて太陽光発電に限っては23年度から0・5ヘクタール超に見直された。無許可の開発や違反行為があれば、県が中止命令や復旧命令を出せる。
Share This News